「今年もお客様は来てくれている。売上も悪くない。それなのに、なぜか手元にお金が残らない」——いま、多くの洋菓子店がこの感覚に直面しています。この記事では、洋菓子店の倒産が過去最多となっている背景と、「売れていても利益が残らない」状態から抜け出すための原価管理の考え方を解説します。
洋菓子店の倒産が過去最多に
帝国データバンクの調査によると、2025年度の洋菓子店の倒産は65件にのぼり、2年連続で過去最多を更新しました。前年度の51件から14件増(約3割増)です。
さらに深刻なのが収益力の低下です。同調査では、洋菓子店の**営業利益率は平均0.7%**まで悪化し、最終損益では約3割超が赤字、減益を含めた「業績悪化」の割合は6割近くにのぼったとされています。
参考:「洋菓子店」の倒産動向(2025年度)|帝国データバンク(2026年5月2日公表)
「売れているのに利益が残らない」の正体
倒産や赤字の背景にあるのが、あらゆる原材料の同時高騰です。TDBの調査でも、小麦粉に加え、バターやクリームなどの乳製品、カカオなどの価格が記録的な高止まりにあり、さらに包装資材・人件費・水道光熱費の上昇も重なっていると指摘されています。
ここで起きているのは、「売上が減ったから苦しい」ではなく、売上は同じでも、1個あたりに残る利益(粗利)が削られているという状態です。作るのにかかるコストが上がった分、同じ価格で売れば利益は薄くなります。
売上ではなく「商品別の粗利」を見る
この状況で経営判断を誤りやすいのが、売上や全体の数字だけを見てしまうことです。お店全体の売上が保てていても、その中には「利益がしっかり残る商品」と「作るほど利益が薄い商品」が混在しています。
大切なのは、商品ごとに原価・原価率・粗利を把握することです。それができると、
- どの商品が利益を生み、どの商品が足を引っ張っているか
- 値上げすべきなのはどれか、レシピを見直すべきなのはどれか
が数字で見えてきます。「なんとなく全部10円値上げ」ではなく、根拠を持って一品ずつ判断できるようになります。
原価表は「一度作って終わり」ではない
もうひとつの落とし穴が、原価表を作りっぱなしにしてしまうことです。いまは同じ材料が1年に何度も値上がりする時代で、昨日まで正しかった原価が、今日には実態と合わなくなります。
材料の仕入れ値が変わったら、その材料を使うすべてのレシピの原価も連動して見直す必要があります。とくにジェノワーズやカスタードのような仕込み品(半製品)は、複数の商品に影響するため、手作業で追いかけると見落としが起きがちです。
今日からできる対策
- 商品ごとの原価・原価率・粗利を把握する(全体の売上ではなく、一品ずつ)
- 仕入れ値が動いたら原価を更新する(年1回ではなく、都度)
- 数字を根拠に値上げ・レシピ改定を判断する(感覚ではなく粗利で)
原価計算の基本的なやり方は、製菓店の原価計算のやり方でも解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
- 2025年度の洋菓子店の倒産は65件で、2年連続の過去最多
- 営業利益率は平均0.7%まで低下し、約3割超が最終赤字
- 原因は「売上減」より「原材料・包装・人件費・光熱費の同時高騰による粗利の圧迫」
- 抜け出す鍵は、売上ではなく商品別の粗利を見ることと、原価をこまめに更新すること
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